主な成果
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信頼性の高い基準年の確立
2023年度の排出量データを見直し、2024年度の企業全体のGHG排出量を、整合性・透明性・再現性のある方法で測定。各事業部門の詳細かつ監査可能なデータに基づき、2024年度を排出強度(生産量あたりの排出量)削減目標の基準年として設定しました。
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戦略的な削減目標の設定
各事業部門の現実的な実行可能性評価(ボトムアップ)と、専門家による分析モデリング(トップダウン)を統合。176件以上の脱炭素シミュレーションを実施し、数十万トン規模のCO₂削減ポテンシャルを可視化したうえで、スコープ1および2の排出強度削減目標を策定しました。
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炭素管理体制の変革
米国および中南米にまたがる6つの事業部門のGHG排出量管理を、単一のオンラインプラットフォーム上に統合。また、排出量報告に関する管理体制を強化し、グループ横断で一貫したデータ管理と開示が可能になりました。
- 組織能力の強化
6つの事業部門のサステナビリティ担当チームが、自ら削減施策をモデル化し、CO₂削減効果を定量化できる体制を構築。共通のデータ基盤を活用しながら、各部門が主体的に実行できる体制と、グループ全体での戦略的な連携を実現しました。
Fruturaと気候変動対応の背景
Fruturaは、米国および中南米に6つの事業部門を展開する、グローバルな果物の生産・販売・流通企業です。生産から流通までを一貫して担う垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。
各事業部門は地域ごとに独立して効率的に運営されていましたが、温室効果ガス(GHG)排出量のデータ管理や測定方法、削減施策の推進においては、全社横断での統一や連携が十分ではありませんでした。
Terrascope導入以前、Fruturaの年間排出量は、事業部門ごとに異なる方法で収集されたデータを基に測定されていました。外部コンサルタントから提示されたGHG排出量は全体像を示すにとどまり、各事業部門が具体的な削減施策を検討・実行するための分析としては十分ではありませんでした。
Fruturaのサステナビリティ担当チームは、測定方法の一貫性を確保し、より詳細な分析や削減シナリオのモデリングが可能なソリューションを求めていました。全社レベルで統合された排出量データを把握すると同時に、各事業部門が自ら主体的に脱炭素施策を進められる仕組みの構築が必要とされていたのです。
Terrascopeによるアプローチ
Terrascopeは、Fruturaの6つの事業部門を単一のプラットフォームに統合し、数十におよぶ農場や選果・包装施設からのデータを一元管理しました。
あわせて、事業部門を横断して共通の排出量測定ルールを整備し、データの責任所在と承認・検証プロセスを明確化しました。
2023年度の排出量データを再整備したうえで、2024年度の排出量を統一された透明性の高い方法で測定。その結果、2024年度を排出強度削減目標の基準年として採用しました。
排出量の測定方法を統一し、プラットフォーム上でデータを横断的に分析できるようになったことで、Fruturaは事業部門ごとの状況を同じ基準で比較できるようになりました。
その結果、各事業部門の排出強度の違いを把握し、排出量が多い工程や活動(排出要因)を特定できるようになりました。また、効果の高い取り組みを他の事業部門にも展開し、どの脱炭素施策に優先的に投資すべきかをデータに基づいて判断できるようになりました。
さらにTerrascopeは、農場や施設の現場責任者が現実的に実行できる施策を検討する「現場視点」と、サステナビリティ専門家による全体最適の分析を組み合わせました。これにより、各事業部門の運営上の違いを踏まえつつ、グループ全体として優先すべき削減機会を明確にしました。
さらにTerrascopeは、シミュレーション機能を活用することで、各事業部門のサステナビリティ担当者が自ら削減シナリオを設計・検証できる環境を構築しました。その結果、各事業部門の実情に即した176件以上の脱炭素シミュレーションを実施。合計で数十万トン規模のCO₂e削減ポテンシャルを定量的に可視化しました。
各チームは初めて、自らシナリオ分析を行い、「この施策を導入した場合にどう変化するか」を検証できるようになりました。削減効果を数値で示し、根拠に基づいた投資判断や社内提案を行える体制が整いました。
こうした検討を重ねた結果、Fruturaは6つの事業部門の取り組みを土台に、スコープ1および2の排出強度削減目標をグループ全体で設定しました。この目標は、意欲的でありながら、各事業部門の実情を踏まえた実行可能な水準で設計されています。また、この取り組みは、今後のサプライヤーとの連携強化やスコープ3削減に向けた土台づくりにもつながっています。
Fruturaにもたらされた価値
Terrascopeは、Fruturaが個別のデータ収集用スプレッドシート運用から脱却し、企業規模で活用できる炭素管理プラットフォームへ移行することを支援しました。現在では、6つの事業部門すべてが共通のデータ基盤に排出量データを集約し、事業部門横断でのパフォーマンスを可視化できるようになりました。
また、投資家向け開示や規制報告に対応するための、グループ全体の排出量データを一貫した形で提供できる体制が整いました。2024年度の排出量測定により、SBTiに対応可能な信頼性の高い基準年(ベースライン)を確立しました。
Fruturaは、急いで目標を掲げるのではなく、まず排出量を正確に測定し、実行可能な削減施策を積み上げることを優先しました。その結果、実態に基づいた現実的な目標設定が可能になりました。
現在、こうした「測定の精度」と「実行可能性」を重視する姿勢は、投資家や大手企業の調達判断においても重要な評価ポイントになりつつあります。
176件以上のシミュレーションは、単に測定精度を高めただけではありません。組織としての意思決定能力を大きく向上させる転換点となりました。Terrascope導入以前は、排出係数や測定結果が外部コンサルタントに依存していたため、社内で柔軟にシナリオ分析を行うことができませんでした。
現在では、各事業部門のサステナビリティ担当チームが自ら施策を検証し、CO₂削減効果を数値で把握できるようになっています。脱炭素計画は6つの事業部門すべての日常の経営判断や業務運営に組み込まれ、プラットフォームを通じた部門間の連携も強化されました。
Terrascopeの導入により、Fruturaは実現可能な排出強度削減目標を設定し、事業部門横断でその達成に向けた取り組みを進められるようになりました。
複数の事業体を抱える企業にとって、Fruturaの事例が示しているのは、効果的な炭素管理には以下のような基盤が不可欠であるということです。
- それぞれ独立して運営されている事業部門を、共通の枠組みで管理できること
- 事業ごとの特性を活かしながら、排出量の算定方法を統一できること
- 現場で実行可能な計画を立てられる分析機能を、各部門が活用できること
- 統合されたデータをもとに、グループ全体としての戦略判断ができること
その結果として実現したのは、各事業部門が自ら考え、実行できる体制と、グループ全体で一貫した戦略を描ける仕組みです。そして、6つの事業部門が足並みを揃えて達成を目指せる、現実的な目標設定が可能になりました。
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