測定に加え、Terrascopeは同様のビジネスモデルを持つ製薬企業とのピア・ベンチマーキング調査を実施。これにより、iNovaの排出プロファイルを検証し、スコープ3がiNovaの総排出量の 99%を占めていること、そしてその構成が業界標準と一致していることを確認しました。また、同業他社の実績をもとに、温室効果ガス(GHG)削減のターゲット施策における有望な改善機会も浮き彫りになりました。
EPR規制が世界的に拡大する中、iNovaは主要市場において包装に関する報告義務を順守する必要がありました。Terrascopeは、戦略パートナーであるRicardo PLCと連携し、シンガポール、ベトナム、オーストラリア向けの規制報告に対応するための販売・包装データの整備を支援しました。具体的には、2024年の販売量に基づき、一次・二次・三次包装の重量を紙、段ボール、プラスチック、アルミニウムなど材質別に分類して取りまとめました。これにより、iNovaは各国規制への確実な対応を図ると同時に、包装材に起因する排出量とリスクを可視化し、戦略的な意思決定につながるインサイトを得ることができました。
さらに、Terrascopeのプラットフォーム上で、2023年のベースラインとした複数の脱炭素施策についてコスト・ベネフィット分析を実施。包装材の代替や輸送の最適化といった具体的な削減施策ごとに投資収益率(ROI)を評価できるようになり、定量的な意思決定を支援しました。
インパクト
Terrascopeとの取り組みにより、iNovaは初めて、監査対応可能な完全版のカーボン排出ベースラインを確立しました。SKUレベルでの詳細な分析により、包装が主要な排出要因として浮き彫りになり、特定の出荷に伴う輸送由来の排出も大きな割合を占めていることが判明しました。これらの結果は、輸送ルートの見直しやサプライヤー選定の最適化といった具体的な改善策の指針となり、排出削減に向けた優先順位の明確化に直結しています。
ピア・ベンチマーキングを通じて得られたインサイトは、自社の排出強度を業界のベストプラクティスに照らして評価する重要性を裏づけるとともに、さらなる削減施策の可能性を広げる契機となりました。
さらに、TerrascopeとRicardoの協働により、iNovaは複数の法域にまたがる包装コンプライアンス要件への対応体制を強化。これにより、規制対応の確実性を高めただけでなく、排出削減にとどまらない業務効率化の新たな道筋も見出しました。
こうした一連の知見をもとに、iNovaは2024年の測定サイクルを始動。直近の買収による事業拡大を反映し、対象製品およびサプライチェーンの範囲をさらに拡張しています。現在は、包装仕様の刷新や物流戦略の見直しによる追加的な削減機会の評価を進めるとともに、優先サプライヤーとの協働による脱炭素の可能性を継続的に検証しています。
Terrascopeを業務およびサステナビリティのワークフローに組み込むことで、iNovaは受動的な規制対応から、能動的かつデータドリブンなカーボンマネジメントへと進化。気候意識が高まる業界において、同社のポジションはより一層強固なものとなっています。