ブログ・取り組み事例 | Terrascope Japan公式

LSRガイダンス:LSR基準を実務に落とし込むための実践ガイド

作成者: Terrascopeチーム|2026/15/07

本記事のポイント

  • GHGプロトコルは2026年6月30日、「土地セクターおよび炭素除去(LSR)ガイダンス」を公表。 このガイダンスは2027年1月1日から適用されるLSR基準を実務に落とし込むための、全518ページにわたる実践ガイドです。

  • LSR基準が「何を満たすべきか」を定めるのに対し、LSRガイダンスは「どう対応するか」を解説。 32の要件について、算定式や意思決定フロー、計算例、グローバル食品企業の事例を交えて具体的な対応方法を示しています。

  • Terrascopeは、LSRガイダンスに沿った算定・データ整備を支援。 土地利用変化(LUC)に必要な20年間にわたる算定から、SBTi FLAG目標への対応まで、監査に対応できるGHG排出量算定を支援します。

本記事では、LSR基準の基本的な内容を理解していることを前提に、ガイダンスの具体的な内容を解説します。LSR基準について初めて知る方は、まず「LSR基準が正式発表:GHGプロトコル新基準で浮き彫りになる、食品・原料の製造業や中間業者の課題」をご覧ください。

LSRガイダンスとは?

GHGプロトコルは2026年1月、土地(Land)に由来するGHG排出量とCO₂除去量の算定・報告に関する初のグローバル基準として、LSR基準を公表しました。LSR基準が「何をすべきか」を定めるのに対し、2026年6月30日に公表されたLSRガイダンスは、「どのように実務へ落とし込むか」を示しています。

LSRガイダンスは、LSR基準の要件を実務で適用するための具体的な方法を、事例や算定方法などを交えて解説する文書です。全518ページにわたり、LSR基準とあわせて2027年1月1日から適用されます。

策定にあたっては、71社によるパイロットテストと、300を超えるステークホルダーによるレビューが実施されています。


LSR基準とLSRガイダンスの関係

LSR基準とLSRガイダンスは、4部・全20章という共通の構成になっています。例えば、LSR基準の第7章「土地利用変化による排出量」には、LSRガイダンスの第7章が対応します。基準が各章で要件を定め、ガイダンスではその解釈に加え、算定に関する章では算定式やデータテーブル、計算例を示しています。

実務では、2つの文書を別々に参照する必要はありません。公表されたLSRガイダンスには、LSR基準の要件が全文収録されており、正式名称も「LSR Guidance Version 1.0, including requirements from LSR Standard Version 1.1」となっています。また、色分けによって、どの記述が必須要件なのかを確認できるようになっています。

両文書の関係は、要件1にも明記されています。土地セクターの活動が多分に含まれる企業は、「LSR基準およびガイダンスに従う」ことが求められます。具体的な算定方法はガイダンスに示されているため、LSRに沿ったGHG排出量算定を行ううえで、ガイダンスは実務上不可欠な文書となります。

LSRガイダンスが重要な理由

LSRガイダンスには、基準の要件を実際の算定に落とし込むための具体的な方法が示されています。例えば、土地利用変化による排出量は20年間にわたって配分して算定しますが、ガイダンスにはその係数表(1年目9.75%から20年目0.25%まで)のほか、60以上の算定式や、各カテゴリーの算定手順が掲載されています。

また、土地由来排出量の算定で課題となる「現在保有しているデータで、どこまで算定できるのか」についても、各章の意思決定フローを使って、データやトレーサビリティの状況に応じた算定アプローチを確認できます。特に食品・消費財メーカーや小売企業にとって重要なのが、第7章の「土地利用変化」です。食品加工業における土地由来排出量の算定課題や、原材料調達におけるトレーサビリティの考え方については、「食品加工業向けLSR解説記事」で詳しく解説しています。


さらに、10社の企業事例も掲載されています。Marsではブラジル産大豆の土地利用変化を自治体レベルで算定した結果、排出係数は1kg当たり0.072~10.02kgCO₂eと、国平均の0.915kgCO₂eに対して大きな幅があることが示されました。PepsiCoではパーム油の99%をRSPOマスバランス認証で調達し、General Millsではサプライヤーの製粉拠点や衛星データをもとに米国産作物の調達地域を特定しています。

LSRガイダンスは、第三者保証においても重要な参照文書となります。採用した算定方法や代替データの根拠を説明する際にも、ガイダンスに沿って判断・算定したことを示せるよう、算定プロセスと根拠を記録しておくことが重要です。


LSRガイダンスで押さえておきたいポイント

LSRガイダンスは、518ページすべてを順番に読むのではなく、自社に必要な章を参照するための実務マニュアルとして構成されています。農産物を調達・加工・販売する企業では、まずPart 1・2の第1~11章が中心となります。ここでは、算定範囲、トレーサビリティ、データと算定方法、4つの土地由来排出カテゴリーについて解説されています。炭素除去を報告する場合は、第12・13章も対象となります。

特に押さえておきたいのは、次の4点です。

  • 必要な章を見つけるためのナビゲーション
    第1章には、対象読者別の表や企業タイプ別の章構成が用意されており、自社が確認すべき箇所を効率的に絞り込めます。
  • データ収集と品質に関する考え方
    第6章では、排出量・取引量・支出額などに基づくデータ収集の優先順位、データ品質の評価方法、代替データを使用できる条件などを示しています。不確実性がある場合は、排出量を過小評価せず、除去量を過大評価しない保守的な値を用いることが基本となります。
  • 算定を効率化できる方法
    国レベルで統計的土地利用変化(sLUC)を算定する場合など、ガイダンスの算定方法に準拠したLCAデータベースの排出係数を利用することで、一部の算定ステップを省略できるケースも示されています。
  • ガイダンスが定めていない範囲
    使用するツールやデータセット自体は企業が選択し、ガイダンスはその妥当性を評価するための考え方を示しています。報告テンプレートや要件チェックリストはGHGプロトコルのWebサイトで提供されています。また、林業については将来のバージョンでの対応が予定されています。

企業が今取り組むべきこと

これまでは、具体的な算定方法が整っていないことが、LSR対応を進めにくい理由の一つでした。しかし、LSRガイダンスの公表によって、実務で必要な算定方法が示されました。

LSR基準は2027年1月1日から適用されます。暦年で算定する企業では、2026年の排出量データが対象となります。また、SBTiでも2027年1月1日以降、FLAG目標の基準年排出量をLSR基準に沿って算定することが求められ、2022年のドラフト版ガイダンスは目標設定の根拠として使用されなくなります。SBTi企業ネットゼロ基準 V2.0の変更点や、FLAGを含め大企業に求められる対応については、「SBTi企業ネットゼロ基準 V2.0:大企業に求められる対応はどう変わる?」で詳しく解説しています。

2026年中に、まず次の3点を進めることが重要です。

  1. 自社に必要な章を確認する
    LSR基準の適用条件や自社の目的を確認し、参照すべき章と、炭素除去に関する章への対応が必要かを整理します。
  2. 主要な原材料を意思決定フローに当てはめる
    排出量への影響が大きい主要な原材料について、現在確保できているトレーサビリティでどの算定方法を適用できるかを確認します。適用できない箇所を特定することで、必要なデータを明確にできます。
  3. 企業事例をデータ・調達部門と共有する
    ガイダンスに掲載されているグローバル食品企業の事例を参考に、必要なデータや収集方法について、データ管理部門や調達部門と具体的な検討を始めます。

Terrascopeが支援できること

LSRガイダンスによって、企業に求められる対応が具体化されました。Terrascopeでは、データ収集から算定、SBTi FLAG対応、監査までを一貫して支援します。

  • LSRに対応したGHG排出量算定
    土地セクターを含むサプライチェーンのScope 1・2・3を算定し、土地利用変化についても、原材料やScopeごとに必要な20年間の算定を行います。各数値の根拠を追跡でき、監査に対応できるデータを整備します。
  • SBTi FLAG対応をプラットフォーム上で実施
    FLAGの基準年排出量の算定から目標設定、進捗管理まで、LSRガイダンスに示された算定方法に沿って一元的に管理できます。

    実際のFLAG測定からSBTi認定取得までの支援については、伊藤園の事例をご覧ください。

  • サプライヤーデータとトレーサビリティを整備
    サプライヤーの種類に応じたテンプレートを活用してデータ収集を効率化。主要原材料のトレーサビリティを段階的に高め、より実態に即した排出量算定につなげます。
  • 専門家による伴走支援
    気候変動・炭素会計の専門家が、データ収集から算定、監査まで支援します。TerrascopeがSBTi認定取得を支援した顧客は、これまで100%認定を取得しています。

土地由来排出量が自社のGHG排出量の大きな割合を占めているものの、データや算定方法に課題がある場合は、まず現状のデータとLSR対応に必要なデータのギャップを把握することが第一歩です。


よくあるご質問