GHGプロトコルは2026年6月30日、「土地セクターおよび炭素除去(LSR)ガイダンス」を公表。 このガイダンスは2027年1月1日から適用されるLSR基準を実務に落とし込むための、全518ページにわたる実践ガイドです。
LSR基準が「何を満たすべきか」を定めるのに対し、LSRガイダンスは「どう対応するか」を解説。 32の要件について、算定式や意思決定フロー、計算例、グローバル食品企業の事例を交えて具体的な対応方法を示しています。
Terrascopeは、LSRガイダンスに沿った算定・データ整備を支援。 土地利用変化(LUC)に必要な20年間にわたる算定から、SBTi FLAG目標への対応まで、監査に対応できるGHG排出量算定を支援します。
本記事では、LSR基準の基本的な内容を理解していることを前提に、ガイダンスの具体的な内容を解説します。LSR基準について初めて知る方は、まず「LSR基準が正式発表:GHGプロトコル新基準で浮き彫りになる、食品・原料の製造業や中間業者の課題」をご覧ください。
GHGプロトコルは2026年1月、土地(Land)に由来するGHG排出量とCO₂除去量の算定・報告に関する初のグローバル基準として、LSR基準を公表しました。LSR基準が「何をすべきか」を定めるのに対し、2026年6月30日に公表されたLSRガイダンスは、「どのように実務へ落とし込むか」を示しています。
LSRガイダンスは、LSR基準の要件を実務で適用するための具体的な方法を、事例や算定方法などを交えて解説する文書です。全518ページにわたり、LSR基準とあわせて2027年1月1日から適用されます。
策定にあたっては、71社によるパイロットテストと、300を超えるステークホルダーによるレビューが実施されています。
LSR基準とLSRガイダンスは、4部・全20章という共通の構成になっています。例えば、LSR基準の第7章「土地利用変化による排出量」には、LSRガイダンスの第7章が対応します。基準が各章で要件を定め、ガイダンスではその解釈に加え、算定に関する章では算定式やデータテーブル、計算例を示しています。
実務では、2つの文書を別々に参照する必要はありません。公表されたLSRガイダンスには、LSR基準の要件が全文収録されており、正式名称も「LSR Guidance Version 1.0, including requirements from LSR Standard Version 1.1」となっています。また、色分けによって、どの記述が必須要件なのかを確認できるようになっています。
両文書の関係は、要件1にも明記されています。土地セクターの活動が多分に含まれる企業は、「LSR基準およびガイダンスに従う」ことが求められます。具体的な算定方法はガイダンスに示されているため、LSRに沿ったGHG排出量算定を行ううえで、ガイダンスは実務上不可欠な文書となります。
LSRガイダンスには、基準の要件を実際の算定に落とし込むための具体的な方法が示されています。例えば、土地利用変化による排出量は20年間にわたって配分して算定しますが、ガイダンスにはその係数表(1年目9.75%から20年目0.25%まで)のほか、60以上の算定式や、各カテゴリーの算定手順が掲載されています。
また、土地由来排出量の算定で課題となる「現在保有しているデータで、どこまで算定できるのか」についても、各章の意思決定フローを使って、データやトレーサビリティの状況に応じた算定アプローチを確認できます。特に食品・消費財メーカーや小売企業にとって重要なのが、第7章の「土地利用変化」です。食品加工業における土地由来排出量の算定課題や、原材料調達におけるトレーサビリティの考え方については、「食品加工業向けLSR解説記事」で詳しく解説しています。
さらに、10社の企業事例も掲載されています。Marsではブラジル産大豆の土地利用変化を自治体レベルで算定した結果、排出係数は1kg当たり0.072~10.02kgCO₂eと、国平均の0.915kgCO₂eに対して大きな幅があることが示されました。PepsiCoではパーム油の99%をRSPOマスバランス認証で調達し、General Millsではサプライヤーの製粉拠点や衛星データをもとに米国産作物の調達地域を特定しています。
LSRガイダンスは、第三者保証においても重要な参照文書となります。採用した算定方法や代替データの根拠を説明する際にも、ガイダンスに沿って判断・算定したことを示せるよう、算定プロセスと根拠を記録しておくことが重要です。
LSRガイダンスは、518ページすべてを順番に読むのではなく、自社に必要な章を参照するための実務マニュアルとして構成されています。農産物を調達・加工・販売する企業では、まずPart 1・2の第1~11章が中心となります。ここでは、算定範囲、トレーサビリティ、データと算定方法、4つの土地由来排出カテゴリーについて解説されています。炭素除去を報告する場合は、第12・13章も対象となります。
特に押さえておきたいのは、次の4点です。
これまでは、具体的な算定方法が整っていないことが、LSR対応を進めにくい理由の一つでした。しかし、LSRガイダンスの公表によって、実務で必要な算定方法が示されました。
LSR基準は2027年1月1日から適用されます。暦年で算定する企業では、2026年の排出量データが対象となります。また、SBTiでも2027年1月1日以降、FLAG目標の基準年排出量をLSR基準に沿って算定することが求められ、2022年のドラフト版ガイダンスは目標設定の根拠として使用されなくなります。SBTi企業ネットゼロ基準 V2.0の変更点や、FLAGを含め大企業に求められる対応については、「SBTi企業ネットゼロ基準 V2.0:大企業に求められる対応はどう変わる?」で詳しく解説しています。
2026年中に、まず次の3点を進めることが重要です。
LSRガイダンスによって、企業に求められる対応が具体化されました。Terrascopeでは、データ収集から算定、SBTi FLAG対応、監査までを一貫して支援します。
実際のFLAG測定からSBTi認定取得までの支援については、伊藤園の事例をご覧ください。
土地由来排出量が自社のGHG排出量の大きな割合を占めているものの、データや算定方法に課題がある場合は、まず現状のデータとLSR対応に必要なデータのギャップを把握することが第一歩です。