ホットスポットの特定と非財務情報の開示: 三菱食品株式会社

 

  • 三菱食品は、財務情報だけでなく非財務情報を積極的に開示している。
  • 非財務情報の一つとして、Scope3の把握は早期に取り組むべき重要なテーマであった。
  • 「Terrascope」の機能により、膨大なデータの分類・計測を行うことができた。

三菱食品は、加工食品・低温食品・酒類・菓子等を取り扱う総合食品商社です。食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献することをパーパスに掲げ、様々な事業環境の変化に対応しながら、サステナブルな食のライフラインとしての役割を追求しています。

積極的な非財務情報の開示

三菱食品では、持続可能な社会を実現するためサステナビリティ重点課題と併せて2030年目標を設定し、2050年カーボンニュートラルの実現に向けCO2削減に取り組んでいます。これまでもScope1とScope2を自主的に把握し、積極的に統合報告書等で実績及び削減目標への進捗を開示しています。気候変動に伴う将来的なリスクに「炭素価格の導入」が、食のサプライチェーンへ大きな影響をもたらすとの分析から、早期にScope3の可視化へ着手することで、持続可能なサプライチェーンの構築に貢献できると考え、2023年度内に情報開示することを目指しTerrascope社と共にScope3の把握を実施してきました。

膨大なScope3データ

サプライチェーンにおける間接的なCO2排出量(Scope3)は、一般的に企業のCO2総排出量(Scope1+2+3)の8割以上を占めると言われ、測定に必要なデータが社内に散在し、データ量も膨大となることが想定されました。日本国内における主たるメーカー様小売業様との取引データ収集方法、異なるデータフォーマットの統合など、可視化に至るまで何度も計測方法について検討しています。例えば、三菱食品の受発注管理単位となるSKUは24万を超えており、それぞれのSKUに対しての管理方法(常温・低温など)が異なるなど、膨大なデータをAIで仕分けできるよう両社協力のもと取り組んできました。

Scope3把握とホットスポットの特定

「Terrascope」は、SaaS型の炭素測定・管理プラットフォームでScope3を包括的に測定・管理するのに優れたツールです。三菱食品とTerrascope社は、まず24万を超えるSKUを類似した製品カテゴリの約2000に分類し、各製品カテゴリの代表的な包材や成分構成に基づいて、製品カテゴリ別カーボンフットプリント(CFP)を算出しました。このデータを「Terrascope」に取り込み、以下の可視化をしています。

Scope3の排出量は、三菱食品全体(Scope1+2+3)排出量の約99%を占める。

Scope3排出量のうち、8割以上がカテゴリ1「購入した製品あるいはサービス」からの排出である。

製品カテゴリ別にみた場合、冷凍食品やアルコ―ル飲料に関連する製品カテゴリの排出量が多い。


次に排出量の多かったのはカテゴリ4の「輸送・配送(上流)」で、次いでカテゴリ12「販売した製品の廃棄」が多く、食品廃棄物あるいはプラスチック包材の処理過程から出る排出量が多い。

MSK-casestudy-quote効果と今後の予定

三菱食品はコーポレートレベルでのScope3可視化だけでなく、「Terrascope」の機能を使うことにより、製品カテゴリレベルでのホットスポットの特定を行うことができました。今後の削減目標設定に向けての指針になるほか、2022年度実績以降の計測では、すでに今回の計測でテンプレート含めたノウハウが蓄積されているため、算出のための人員・時間の削減やさらに踏み込んだ計測が実施されることを期待しています。また「ホットスポット」が特定できたことによる1次データへの切り替えなどを進め、より詳細な分析手法に基づくデータを開示することで更なるESGの価値訴求を目指す予定です。

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