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気候開示

【いまさら聞けない】CDPとは?環境経営リーダーが押さえておくべき開示基準と実務対応のポイント

CDPとは何か?環境経営を担うリーダー層に向けて、質問票の構成やスコアの意味、実務対応のポイントをわかりやすく解説します。

 


目次

  1. CDPとは?環境情報開示の“共通言語”を理解する
  2. 部下に説明できますか?CDPの質問票で問われる経営戦略と環境リスク
    1. CDP質問票とTCFDの関係:気候リスクをどう捉えるか
    2. 排出量データの内訳:スコープ1〜3の網羅とサプライチェーンの可視化
    3. 削減目標の整合性:SBTの併用による評価向上
    4. 他の国際基準との関係性
  3. リーダーとして知っておくべきCDP対応の基本ステップ
    1. 経営層の理解と体制づくり
    2. GHG排出量の可視化と算定
    3. 質問票の理解
    4. スケジュールの把握と準備
  4. CDPスコアとその意味とは?自社の立ち位置を知るために
  5. よくある疑問とリーダーの判断軸
  6. まとめ|環境情報開示は“経営の言語”になる

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TerrascopeはCDPゴールド認定プロバイダーとして、スコープ1〜3の排出量算定から、知識ある専門家による申請支援まで、貴社のCDP対応を幅広くサポートします。

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※本記事は、2024年のCDP質問票および関連資料をもとに執筆しています。

 

CDPとは?環境情報開示の“共通言語”を理解する

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あなたの企業にも、環境情報開示の対応が本格的に求められる時代が来ています。なかでも「CDP(Carbon Disclosure Project)」は、投資家や取引先から直接問われることの多い、国際的な開示基準です。
責任ある立場として、自社の環境戦略をどう見える化していくかが問われる中、本記事ではCDPの基本と実務対応のポイントを整理します。

CDPは、企業や政府機関、自治体に対してサステナビリティ開示や環境関連の情報開示を促す国際的な非営利団体(NGO)のことです。2000年にイギリスで設立され、「人々と地球にとって、長期的に、健全で豊かな経済を保つ」ことを目的とし、世界有数の包括的な環境情報データベースを構築し運用しています。 

日本では2005年から活動を開始し、現在の活動拠点は一般社団法人CDP Worldwide-Japanです。設立当初は気候変動(Climate Change)に特化していましたが、現在では水資源(Water Security)、森林(Forests)も対象となっています。

CDPは企業に対し、これら3分野の取り組みに関する質問票を配布し、情報を収集・分析し開示してきました。企業の開示内容に対してA〜D⁻の8段階でスコア評価が行われます。最高評価の「Aスコア」は、パフォーマンスと透明性の両立が認められた企業に与えられ、「Aリスト」として公表されます。本記事では後半で、スコアの評価構造やAランクの企業事例について詳しく解説します。

CDPの報告によると、2024年には、日本企業2千社あまりを含む2万4千以上の組織が質問票に回答し、回答期限までに回答したすべての企業が評価されました。

近年、CDPへの注目度が高まっている背景にあるのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大や環境情報開示の義務化の流れです。まず、CDPスコアはESG投資の重要な指標であり、世界中の投資家が企業の開示内容を比較・活用しています。そのため、企業にとってCDPへの対応は投資先として選ばれるうえで欠かせません。

さらにCDPは、質問票の内容を世界の主要な情報開示の基準と整合させることにより、相互運用性の向上を目指しています。

具体的には、ISSB(International Sustainability Standards Board)のIFRS S2号(国際財務報告基準・気候関連開示)、ESRS(欧州サステナビリティ開示基準)、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォースの提言)、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative)基準、サステナブル・ファイナンス・タクソノミーなどです。

このようにCDPは、環境関連のリスクや取り組みを評価する世界共通の基準として広く活用され、世界の共通言語といえるほどに存在感を増しています。

参考:
CDP
[企業向け] CDP概要と回答の進め方
開示基準やフレームワークとの整合

関連記事:
SSBJとは?開示基準や義務化の対象と適用時期の見込みについて解説


部下に説明できますか?CDPの質問票で問われる経営戦略と環境リスク

CDP対応において、あなたの企業が問われるのは「GHG排出量の数値」だけではありません。経営戦略、リスク管理、サプライチェーン全体への責任など、企業全体としての環境対応の「戦略性」が求められます。ここではまず「質問票で何が問われるのか」を見ていきましょう。

CDP質問票とTCFDの関係:気候リスクをどう捉えるか

CDPは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と整合した設問構成を採用しており、気候変動リスクと機会の評価も求められます。単なる環境対策ではなく、「気候変動が企業価値にどのような影響を与えるか」という経営視点での戦略立案が問われているのです。

排出量データの内訳:スコープ1〜3の網羅とサプライチェーンの可視化

GHG排出量の開示は、スコープ1(自社内)、スコープ2(電力などの間接排出)、スコープ3(サプライチェーン)に分類されます。中でもスコープ3は、取引先や原材料の調達・廃棄までを含むバリューチェーン全体の排出量であり、多くの企業で排出量の大半を占めるため、対応の優先度が高い分野です。

調達先に対し情報開示と削減行動を奨励する取り組みが、CDPサプライチェーンプログラムです。2024年には、過去最多となる6万社以上のサプライヤーに対し、サプライチェーンメンバーから開示要請が送付されました。 

こうしたGHG排出量の算定や目標設定を進めるうえで、データの信頼性と運用の効率化が欠かせません。Terrascopeは、CDPゴールド認定プロバイダーとして、企業の排出量可視化を支援しており、スコープ1〜3を含むGHG排出量を、各種データソースと連携して算定・可視化するSaaS型ツールを提供しています。

削減目標の整合性:SBTの併用による評価向上

科学的根拠に基づいたGHG排出量の削減目標の設定と削減計画も重要です。特にAスコアを獲得するには、SBT(Science Based Targets)認定を受けている必要があります。

企業によっては、CDP回答と並行してSBTへのコミットメントを行うことで、全体戦略の一貫性と信頼性を高めることができます。 

他の国際基準との関係性

ここで、CDPとTCFD、SBT、ISSBの関係を簡単に整理しておきましょう。

  • TCFD:気候情報を「どう開示するか」の考え方(フレームワーク)
  • CDP:それを「質問票」として具体化し、スコア化する仕組み
  • SBT:排出量削減目標の「科学的な正しさ」を第三者が認定する仕組み
  • ISSB(IFRS S2):それらの開示を財務報告と統合する国際基準

このようにCDPの質問票は、GHG排出量の開示にとどまらず、気候変動リスク、削減戦略、バリューチェーン対応、ガバナンス体制といった広範な経営テーマを可視化する設計となっています。ESG投資や顧客からの評価においても、この一連の戦略性が重視されており、企業競争力の源泉として、経営課題としてのCDP対応が求められています。

参考:
CDP 2024スコア 解説資料
CDPサプライチェーン・メンバーシップ

関連記事:
サプライチェーン排出量とは?算定方法や義務化の流れ、取組み事例を解説
SBTとは?認定取得メリットや日本企業の対応状況を解説

リーダーとして知っておくべきCDP対応の基本ステップ

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どこから始めるべきか迷われている方へ。CDP対応を指揮する立場の方が押さえるべき、4つの実務的ステップをご紹介します。

経営層の理解と体制づくり

まず始めに、経営責任者層との丁寧なコミュニケーションを通して、CDP対応の意義を認識してもらうことが重要です。必要な取り組みをトップダウン形式で推進できれば、社内全体を巻き込んだ体制整備が可能となります。

CDP回答には、投資家対応、経営企画、CSR・サステナビリティ、調達などの部門が連携することが不可欠であり、経営トップの理解があってこそスムーズな連携が実現します。

GHG排出量の可視化と算定

CDPの質問票では、スコープ1・スコープ2・スコープ3の定量的な把握が求められます。算定の基本式は、「活動量 × 排出係数」ですが、信頼性の高い算定には部門ごとのエネルギーデータや物流情報、調達品目などの具体的なデータが必要です。

特にスコープ3の算出は、社内外から幅広く情報を収集し、合理的な推計や範囲設定を行う判断力も求められます。Terrascopeでは、SaaSツールによってこれらのプロセスをデジタル化・自動化し、データの信頼性を担保しながら、CDP質問票やSBT提出に必要な情報出力にも対応しています。

質問票の理解

質問票は、イントロダクション、リスク・機会、ガバナンスなど13のモジュールで構成されています。各モジュールの具体的な質問項目により定量データや定性情報が問われ、選択形式ではなく記述形式で回答します。

それぞれの質問項目にデータを用いて記述形式で回答したものがスコアリングの基礎資料となるため、正確で戦略的な対応が不可欠です。

スケジュールの把握と準備

CDPの回答の受付は例年4月下旬から9月中旬ごろで、2025年のスケジュールでは、評価を受けるためには回答を9月15日の週までに提出しなくてはなりません。質問票に回答するためには、データの収集や各部門からのヒアリングなどに相応の時間が必要です。

必要な情報はGHG排出量に関するデータ、削減目標や進捗、事業戦略、気候リスク評価結果など多岐にわたります。

CSR部門が全体の統括を担い、経企部門が戦略面、調達部門がサプライチェーン関連、IR部門が対外開示と投資家対応を担当するなど、明確な役割分担が欠かせません。

CDPとは単なる質問票への対応ではなく、環境経営の実践そのものです。最初の一歩を戦略的に踏み出すことが、企業のサステナビリティ対応を加速させる鍵となります。

参考:
[企業向け] CDP概要と回答の進め方

CDPスコアとその意味とは?自社の立ち位置を知るために

自社の環境対応が、どのレベルにあるか。CDPスコアはその「立ち位置」を定量的に示す評価指標です。
責任ある立場として、自社がどのように評価されているのかを把握しておくことが重要です。AからD⁻までの8段階で評価され、最高評価のAは透明性、パフォーマンスにおけるベストプラクティスを意味します。

CDPスコアの評価構造は、次の表のとおりです。

Leadership

A及びA⁻

現在ベストプラクティスを実践している

Management

B及びB⁻

環境問題によるリスクや影響を追跡・管理している

Awareness

C及びC⁻

自社の及ぼす影響と受ける影響を認識している

Disclosure

D及びD⁻

環境影響に関する情報開示を開始した

 

F

CDPが評価する上で十分な情報が提供されていない

これらの評価を行うのは、CDPスコアリングチームやCDPのトレーニングを受けて認定されたスコアリングパートナーです。環境課題に関する科学的知識に基づく評価基準に従って、独立した立場で評価するため公平性が担保されています。

なお、スコアリング基準等、スコア算出に関する資料はオンライン上で閲覧可能です。

企業のスコアはCDPのサイトのほか、ブルームバーグの株価情報端末やGoogleファイナンス、ドイツ証券取引所などにも掲載され、世界中の機関投資家に利用されます。

CDPにおいて高スコアを獲得するメリットは少なくありません。まず、最高評価のAスコアを獲得した企業はAリスト企業として掲載され、環境対応における先進企業と見なされます。

2024年のCDPの分析によると、Aリスト企業は過去10年間、市場全体の平均的な成績(ベンチマーク)を年間約6%上回るリターンを達成しているとのことです。これは、Aリスト企業が環境リスクへの対応力が高く、サステナブルなビジネス戦略を持つと見なされている結果といえるでしょう。

高いCDP評価は企業のブランドイメージを高め、投資家や消費者をはじめ社会からの信頼獲得にもつながるため大変重要です。取引先の選定において有利になるほか、環境リスクを重視するサプライチェーンに組み込まれる可能性もあります。

このようにCDPスコアは、企業の長期的な成長を左右するといっても過言ではなく、今後さらに持続可能な取り組みを強化し、評価向上を目指すことが不可欠となっています。

参考:
CDP2024スコア 解説資料
環境データを開示する理由


よくある疑問とリーダーの判断軸

よくある疑問に対する、Terrascopeの専門メンバーによる回答を下記にまとめています。CDP対応には、社内だけではなく社外の関係者と信頼関係を築くことが大切です。

CDP対応の必要性について分かりやすく説明できれば、相互に協力し合える体制の構築につながります。説得力のある合理的な説明ができるよう、判断軸としてご活用ください。

Q1: CDPに対応しないリスクとは?

CDPスコアはESG投資の重要指標であり、未開示や低評価は投資先から除外される可能性があります。また、グローバル企業はサプライヤーにCDP回答を要請している場合もあり、未対応だと商談機会を失うかもしれません。さらに、他社が環境情報開示に積極的である中で沈黙を貫けば、企業としての透明性や持続可能性の評価が下がり、ブランド価値に影響します。

Q2: CDPのスコアが低くても開示すべき?

スコアが低くても開示すべきです。開示することが第一歩であり、スコアが低くても環境リスクを認識し改善に取り組む姿勢を示すことで、企業として取引・融資・採用面でも有利となります。未開示(Fスコア)の場合は、投資家や取引先から環境リスクを軽視していると認識される可能性が高いです。

Q3: GHG排出量が未算定でもCDPに回答できる?

完璧な数値ではなく取組姿勢と透明性が重視されるため、GHG排出量の算出が未完であっても回答すべきです。
未算定である理由と今後の計画、社内の取組状況などを記載することで、環境リスク管理に向けた前向きな取り組みとして評価されます。

なお、複数拠点や海外子会社を有する場合、またはスコープ3が多岐にわたる業態では、信頼性と効率性を両立させるために、TerrascopeのようなSaaS型算定ツールの導入が有効です。排出量の可視化から報告対応までを一貫してサポートできるため、CDP対応における初期フェーズからの活用が推奨されます。

Q4: CDPは英語で提出する必要がある?日本語でもOK?

CDPは、英語、日本語、中国語、スペイン語、ポルトガル語で回答されたものをスコアリング対象としており、日本語での提出も可能です。ただし、質問票内では全編で言語を統一する必要があります。また、より多くのステークホルダーに情報開示を行う観点から、英語での回答が推奨されます。

Q5: スコープ3の算定が不十分な場合、CDPにどう対応すべき?

スコープ3のデータが不十分でも、CDP回答は提出すべきです。CDPは、算定済みカテゴリーの範囲だけでも開示することを推奨しています。スコープ3はスコアに直接影響しますが、未整備であっても現時点での算出状況や改善計画を明示することで、前向きな取組として評価されます。特に、スコープ3が全排出量の大半を占める業種や、データ収集が難航しがちな場合には、TerrascopeのようなSaaS型算定ツールの導入が効果的です。多拠点・多部門からの情報を一元管理しながら、信頼性ある算定と報告を効率的に進めることができます。

 

CDPへの対応を、自社の価値を高める機会に。
Terrascopeは、CDPゴールド認定プロバイダーとして、排出量の可視化からスコア向上に向けた戦略立案まで、ワンストップで支援しています。

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まとめ|環境情報開示は“経営の言語”になる

経営として、どのように環境情報を開示すべきか。CDPはそのための「共通言語」であり、今後、開示対応はリーダー層の意思決定に直結します。

近年はESG投資や顧客企業からの開示要請が増え、未対応であることが事業機会の損失やレピュテーションリスクにつながる可能性があります。

CDPスコアは取引先選定や資金調達の判断材料として重視されており、競争で優位に立ち顧客を維持するためには、早期対応が欠かせません。特に経営層からのトップダウンで部門横断で対応を進め、自社のGHG排出量を可視化することが第一歩です。

CDP対応は、単に情報を集めるだけでなく、“説明できる経営”を支える基盤づくりでもあります。
「どこから着手すべきか分からない」「スコープ3の算定が追いつかない」「社内で横断的な連携が取りづらい」といった課題を抱える企業様にとって、Terrascopeは最初の一歩に最適な選択肢です。

Terrascopeでは、排出量の算定から削減アクションのシミュレーション、SBTやCDPなど各種申請対応までを包括的にサポート。プロフェッショナルサービスとの組み合わせにより、実効性の高い環境経営の実現を後押しします。

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