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顧客事例

Prime Cotton:4.5万ヘクタールの上流排出量を可視化したサステナブルコットン企業の先進事例

世界最大規模の綿花生産者Prime Cottonが、Terrascopeと連携して上流排出量を可視化。7,000戸の農家データを活用し、従来比12%の低排出原綿と脱炭素戦略の高度化を実現しました。

 

導入製品

製品カーボンフットプリント
独自排出係数の算出

業界

農業・繊維

本社所在地

アゼルバイジャン共和国 バクー

企業規模

アゼルバイジャン国内23拠点で従業員3,200名
4.5万haの綿花を栽培する農家7,000戸

主な成果
  • 低排出コットンの実現:Terrascopeによる排出量算定により、原綿のカーボンインテンシティが0.873kg CO₂eと、従来比で12.3 %低いことを確認。
  • 脱炭素化戦略の強化:7,000戸以上の農家から得た一次データにより、播種からジニング(綿繰り)までの排出量の多いホットスポットを特定。削減効果の高い領域に注力可能に。
  • 排出量可視化の迅速化:Terrascopeの活用により、単一製品の評価に数か月を要する従来のライフサイクルアセスメント(LCA)と比べ、算定にかかる時間を75 %短縮。

 

概要

コットン生産大手のPrime Cottonは、4万5,000ヘクタールの農地と7,000戸超の農家と連携し、サステナブルコットンの供給体制を強化しています。

Terrascopeとの協業では、農場やジニング(綿繰り)工場を含む上流工程における温室効果ガス(GHG)排出量を、一次データとAI技術を活用して製品単位で算定。数週間のプロセスを通じて、データ品質の向上、ギャップの解消、排出ホットスポットの特定を実現しました。

これにより、Prime Cottonは世界平均と比較可能な高精度なカーボンフットプリントを取得し、排出量会計およびデータ管理体制を改善。今後の脱炭素化施策に向けた確かな基盤を築きました。

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Prime Cottonについて

Prime Cotton LLCはGP Cottonの子会社であり、4万5,000ヘクタールの綿花農地、11の綿加工センター(ジン)、3つの紡績ユニット、1つの織布・アパレル複合施設を擁する垂直統合型のコットン企業です。アゼルバイジャンにおいて25年以上の実績を持ち、主な事業は綿花の栽培・供給およびジニングによる加工です。農地は自社で管理する5,000ヘクタールに加え、契約農家が耕作する約4万ヘクタールを含み、合計7,000戸の農家が関与しています。また、コンバイン約200台、トラクター約800台などの機械化フリートも保有。子会社であるMingachevir Textile Park(MTP)は、Prime Cottonが生産する綿繊維を使用して糸を製造しています。ハイストリートファッションから一般的な実店舗ブランド、百貨店まで、幅広い顧客にサービスを提供しながら、責任あるコットン調達と脱炭素化への取り組みを強化しています。

 

Prime Cottonの歩み

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Prime Cottonの綿花による気候への影響を正確に評価するには、同社が運営する直営農場、契約農場、そしてジニング工場の排出量を測定する必要がありました。この広範なフットプリントを対象とするにあたり、以下の主要な課題を克服しなければなりませんでした。

1. 
農場固有の排出計算の実施
土地利用変化、農業投入物、肥料使用、灌漑エネルギー、農機の稼働、作物残さ管理など、多岐にわたる排出源に対して、高度に詳細なデータ収集と複雑な計算が求められました。

2. 農場で栽培される複数作物間での排出量の配分
綿花に加え、大麦や小麦も栽培しているため、詳細データが不足している場合には、肥料や農薬などの投入量を科学的根拠に基づいて各作物に合理的に配分する必要がありました。

3. 複数の綿花製品ごとの排出量の配分
原綿はジニング工場で綿繊維、綿実、その他副産物に分離されるため、本プロジェクトではそれぞれの製品の経済価値に基づ木、排出量を配分しました。

4. 多様な形式と言語による大量データの取扱い
4万5,000ヘクタールの綿花農地、7,000戸の農家、11のジニング工場から収集した一次データは、量、形式、言語が多岐にわたり、それらを有効活用すること自体が大きな成果となりました。

これらの課題にもかかわらず、Prime CottonはTerrascopeと協力し、毎年繰り返し実施可能で、将来を見据えた排出量測定の手法を確立しました。確かなアクションにつながるデータに裏打ちされた指標を得ることで、Prime Cottonは脱炭素化を継続的な事業活動の中心に据えています。

 

Terrascopeとの協働によるPrime Cottonの成果

Prime Cottonは、Terrascopeを脱炭素化プラットフォームとして採用し、ジニング工場までの綿花生産において発生するGHG排出量を評価しました。

Terrascopeのデータ専門性を活用し、7,000戸を超える農家から農業投入物、土地ポリゴンデータ、農機燃料の使用量、灌漑用電力などの一次データを収集。AIモデルを活用して排出係数を適用し、総排出量を算定した上で、農場全体の生産量に配分しました。Prime Cottonの原綿を世界各地域の従来型綿花と比較したベンチマーク結果は以下のとおりです。

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データを深く掘り下げることで、Prime Cottonの原綿排出量は多くのライフステージで世界平均と同等である一方、契約農場の多くが20年以上にわたり操業しているため、土地利用変化(LUC)に由来する排出量は平均より低いことが明らかになりました。

また、Prime Cottonの綿繊維を世界平均と比較した結果は次のとおりです。

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Prime Cottonの原綿は、農場ゲート時点での1 kgあたりの排出量が世界平均より12%低かった一方、綿繊維段階では1 kgあたりの排出量が平均よりわずか0.5%低い水準にとどまりました。これは、綿繊維1 kgを得るために必要な原綿が2.37 kg(世界平均は2.08 kg)と多いことが要因です。さらに、ジニング工程における電力と天然ガスの使用が排出強度を高めていることも判明し、効率改善と脱炭素化の可能性が示されました。

Terrascopeは、Prime Cottonの現行プロセスを踏まえ、自社のデータ変換モデルとAI機能を活用して、全体の排出フットプリントを可視化。データギャップの特定とインプットフットプリント(肥料、燃料、水など生産に使われる材料・エネルギーに起因する排出量)の広範な評価を支援しました。このプロセスを経て、Prime Cottonは迅速かつスケーラブルに排出会計を運用し、サステナブルコットン生産者として自信をもって情報発信できる体制を整えました。

01. 選ばれるサステナブルコットン

Prime Cottonの原綿および綿繊維は世界平均より低いカーボンインテンシティ(製品1 kgあたりの温室効果ガス排出量)を実現しています。原綿の排出量は0.873 kg CO₂eで、従来比で12.3 %低く、この低排出原綿が、綿繊維2.161 kg CO₂eという低排出の結果につながっています。

上流工程全体で見ると、原綿の排出量は世界ベンチマークと同等ですが、土地利用変化(LUC)や灌漑に関連する排出量は平均よりも低く抑えられています。サステナブルコットンに対する需要は高まっており、ある調査では回答者の72%が、自社サプライチェーンにおいてサステナブルコットンの使用を求めていると報告されています。Prime Cottonは、高粒度なデータにより、他社との差別化を図ることが可能です。

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02. より強力なデータ活用体制

Terrascopeのデータ収集プロセスは、Prime Cottonにとって将来に向けた強固なデータ基盤の構築に貢献しました。一次データを大規模に変換し、複雑な形式を管理できるTerrascopeの技術力により、Prime Cottonは排出量の精度と粒度を向上させ、製品レベルでの透明性と説明責任を一層強化しました。

03. 排出量可視化の将来性確保

GHGプロトコルおよびISO 14064・ISO 27001:2022の認証を取得済みのTerrascopeとのパートナーシップにより、Prime Cottonの排出量測定とレポーティングは、科学的根拠に基づく信頼性・再現性のあるものとなりました。本協業は、製品カーボンフットプリント(CFP)の可視化にとどまらず、Prime Cottonにとって持続的価値を生む重要な取り組みとなっています。


Prime Cottonにもたらせれた価値

Terrascopeとの協業によりPrime Cottonは4つの価値を創出しました

Better Transparency-1

サステナブルコットンの透明性向上

Prime Cottonは、自社製品のカーボンフットプリント(CFP)を明確に伝えられるようになり、透明性と信頼性によって製品を差別化できるようになりました。Prime Cottonの綿花を使用する下流のテキスタイル・アパレル企業も、同社が提供するカスタム排出係数を自社の排出量計算に活用することが可能です。
排出量の可視性が重視される現在の市場環境においては、VerdantixとTerrascopeによる最新調査で、68 %の企業が「サプライチェーンの透明性」を最優先課題として挙げています。

Improved Methodology-1

データ手法の改善

Prime Cottonの独自カスタム排出係数は、サプライチェーン全体のスコープ3排出量をより正確に報告することを可能にしています特に、農場レベルの排出量を一次データで算出できる点は、業界内でも先進的な取り組みです。
Terrascopeのアプローチにより、Prime Cottonは正確性と監査対応性を両立した排出データを獲得し、サステナビリティの旅路における信頼されるパートナーとしての地位を確立しました。

Avoiding Costly-1

不透明な年次手動測定の回避

Prime Cottonは今後、毎年の排出フットプリントを自信をもって継続的に測定できる体制を整えました。これは、アゼルバイジャンの綿花農業慣行に即した独自のカスタム排出係数を構築したことにより、従来の不正確かつ高コストな年次評価の回避が可能になったためです。
Terrascopeは、排出要因を可視化し、イノベーション農場と契約農家の生産性を比較することで、優良事例の抽出や脱炭素の重点領域の特定も支援しています。


Focused Decarb

競争力ある脱炭素化戦略への集中 

サステナブルコットンの需要はかつてないほど高まっています。TerrascopeとVerdantixが実施した繊維業界に関する最近の調査では、回答者の72%が「調達する綿花の少なくとも半分はサステナブル由来」と回答しています。 Prime Cottonは、7,000戸の農家から得られた一次データを活用し、焦点を絞った継続的な脱炭素化戦略を策定。これにより、サステナブルコットン生産者としての国際的な競争力を一層強化しています。

 

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