Skip to content
気候開示

カーボンフットプリントとは?計算方法・必要性・企業事例を解説

カーボンフットプリントの計算方法を具体例とともに解説。GHG排出量の可視化と企業の算定ステップをご紹介します。

カーボンフットプリントとは?計算方法・企業事例

日本・世界のカーボンフットプリントの重要性や義務化の流れ、計算方法とポイントTerrascope(テラスコープ)のツールを活用したポッカ社など大手企業のCO2排出量の計測・削減事例をご紹介します。

 



目次

  1. カーボンフットプリント(CFP)とは
  2. 日本でのカーボンフットプリントの対応の必要性・義務化
  3. カーボンフットプリントラベル(CFPマーク)の仕組みと取得方法
  4. カーボンフットプリントの計算方法
  5. カーボンフットプリント計算の課題と解決策
  6. Terrascopeによるカーボンフットプリント計算の支援事例
  7. Terrascope(テラスコープ)プラットフォームでできること

 

coffeePaper_bannerDL用

 

カーボンフットプリント(CFP)とは

カーボンフットプリント(CFP)は、製品やサービスが経済活動のどの段階でどれだけの温室効果ガス(GHG)を排出するかを、ライフサイクルアセスメント(LCA)の枠組みを用いて CO₂換算量(CO₂‑eq) で定量化する指標です。

  • 国際規格 ISO 14067:2018 が主要な算定基準で、2025年現在も同版が有効(次版はドラフト段階)。定義では「製品システムの総GHG排出量から除去・吸収量を差し引いた値」と規定されています。

  • LCA は、製品の原材料調達から生産、流通、使用、廃棄・リサイクルまでの全工程(“cradle‑to‑grave”)を対象に環境への影響を評価する手法です。

関連ページ:LCAとは?CFPはこれらのプロセスにどのように適用できるのでしょうか?

ライフサイクル各段階と排出例

段階 主な排出源の例
原材料調達 資源採取、部品・素材生産、農業生産
生産 製造ラインの熱・電力、包装材製造
流通 国内外輸送、倉庫保管(冷蔵・冷凍含む)
使用 家電の運転電力、洗剤・水の使用
廃棄・リサイクル 焼却、埋立、リサイクルプロセス

 

 

 

 

 

 

 

従来は自社工場やオフィスで発生する直接排出(スコープ 1)に注視する企業が多く、製品単位での排出量はブラックボックスになりがちでした。CFPは“見えない排出”をサプライチェーン末端まで可視化し、改善策の優先順位付けに活用されます。

例えば、同じ店舗に並んでいるお茶であっても、ペットボトルに入ったものと紙パックに入ったものでは、容器の製造や廃棄にかかるCO₂排出量に違いがあります。
製造やリサイクルが容易な容器に入ったお茶の方が、カーボンフットプリントを算定した時にCO₂排出量が少なくなります。
こうした製品のラベル情報は、消費者が環境負荷の低い選択をする判断基準となり、企業側には低炭素設計の競争力をもたらします。結果として、サプライチェーン全体が低排出型へシフトする好循環が生まれます。

CFPの詳しい定義については、経済産業省・環境省が作成したガイドラインに詳しく掲載されています。

参考:カーボンフットプリント ガイドライン|経済産業省、環境省 

日本でのカーボンフットプリントの対応の必要性・義務化

脱炭素経営の指標として、製品単位のカーボンフットプリント(CFP)開示はもはや「先進企業の取り組み」に留まりません。GX 推進法による基本方針、ISSB 基準の国内導入、EU CBAM への対応、取引先からのデータ要請、そして環境表示規制の強化。五つの潮流が CFP を“事実上の必須要件”へと押し上げています。

  • EU CBAM 対応

    • 2023年10月から報告フェーズ開始(鉄鋼・アルミなど6品目)

    • 2026年1月から課金フェーズへ移行し、製品ごとの CO₂ 排出係数登録+証書購入が必要

    • 2026年に下流製品(自動車・家電等)への適用拡大を欧州委員会が検討

      出典:欧州委員会 CBAM FAQ/Reg. 2023/956 Art. 3, 32

  • バリューチェーン圧力(上流からのデータ要請)

    • トヨタ自動車・三菱商事・味の素などが 2024年版調達ガイドラインで取引先に CFP/Scope 3 データ提出を要請

    • 未対応サプライヤーは取引選定で不利になる可能性がある

      出典:トヨタ グリーン調達ガイドライン 2024 p.4 

  • 環境表示規制の強化

    • 2025年4月改正「景品表示法・環境優良誤認表示ガイドライン」で、CFP 数値は算定基準・検証機関を併記しないと不当表示の恐れ

    • 2024年度版 製品カーボンフットプリント算定ガイドライン で ISO 14067 と WBCSD PACT のデータ互換を推奨

      出典:消費者庁リリース(2025-02-07)

カーボンフットプリントラベル(CFPマーク)の仕組みと取得方法

カーボンフットプリントマークの取得方法

 

カーボンフットプリント(CFP)ラベルは、製品ライフサイクル全体で発生する CO₂e 排出量を数値で表示する環境ラベルです。表示することで、企業は温室効果ガス削減への取り組みを消費者や取引先に示しやすくなります。数字の大小だけで製品の優劣が決まるわけではありませんが、環境意識の高いユーザーへの訴求力は確実に高まります。

 

1. 日本国内の制度動向

  • 経済産業省主導の試行事業(2009–2012 年)終了後、国としての CFP マーク制度は現時点で再整備されていません。

  • 多くの企業は民間の国際ラベル(例:Carbon Trust Footprint Label、EPD®)に自主的に申請するか、社内基準で数値表示を行う方法を選択しています。

2. 取得の一般的ステップ

  1. 製品別 CFP 算定(ISO 14067 準拠)

  2. 第三者レビュー:認証機関または ISO 17065 認定機関がデータと算定方法を検証

  3. ラベル交付・オンライン登録

  4. 更新審査:多くの制度で 2–3 年ごとに再算定・再審査が必要

カーボンフットプリントの計算方法

カーボンフットプリント(CFP)は、製品 1 単位あたりの温室効果ガス排出量(CO₂eq) をライフサイクル全体で合算して算定します。基本式はシンプルですが、データの品質と範囲の切り分けがポイントです。

1. 算定範囲(5 工程)

原材料調達 原材料の使用量 × 原料1kg当たりのCO₂排出量
生産 商品生産時の消費電力 × 消費電力1kWh当たりのCO₂排出量
流通 商品の輸送量 × 商品1kgを1km輸送するときのCO₂排出量
使用 商品使用時の消費電力 × 消費電力1kWh当たりのCO₂排出量
リサイクル・廃棄 商品の焼却量 × 商品1kg当たりのCO₂排出量

2. 基本式

CO2排出量=Σ(活動量×CO₂排出原単位)

  • 活動量(Activity Data):原材料重量、電力量、輸送距離など

  • 排出原単位(Emission Factor):1 kg・1 kWh 当たりの CO₂eq

例えばある電化製品を使用したときの、活動量とCO₂排出原単位は以下のようになります。

(1)活動量 使用時の電力消費量(kWh)=4.0kWh
(2)CO₂排出原単位 消費電力1kWh当たりのCO₂排出量=455g-CO₂eq/kWh
[計算] (1)活動量 × (2)CO₂排出原単位=4.0×455=1,820g-CO₂eq

3. データ種別と代表的ソース

データ種別 内容 主なソース
一次データ 企業が直接計測・取得した実測値 工場エネルギー計、IoT センサー
二次データ 公開データベース - 環境省「算定・報告・公表制度」
- IDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)
- IPCC Emission Factor Database(EFDB)
- ecoInvent
二次データ利用の注意点
  • 削減努力の反映遅れ
    二次データは平均値のため、最新の省エネ設備導入など自社努力が CFP に反映されにくい。

  • 地域差・最新係数の更新
    排出原単位は電力ミックス変更や素材製造技術の更新で毎年変動。算定年度の係数を使用する必要があります。

CFP 計算の核心は「正しい活動量 × 適切な排出原単位」を漏れなく結合することです。一次データ比率を高めつつ、信頼できる二次データを組み合わせることで、より現実に近い数値を導き出せます。

関連ページ:コンパス #3:グローバルな排出係数の重要性 〜海外電力のGHG排出量〜

カーボンフットプリント計算の課題と解決策

カーボンフットプリント(CFP)の算定は、サプライチェーン全域のデータ収集・係数選定・情報管理などで思わぬハードルが生じます。ここでは主な課題を整理し、排出係数の自動マッチング機能や PACT 準拠のデータ共有を備えた Terrascope でどこまで軽減できるかを示します。

ghg-emissions-measurement-calculation-2

1. データ収集の工数が膨大

CFP を正確に算定するには、原材料・製造・物流・廃棄など多岐にわたる一次データをサプライヤーから集める必要があります。特に中小企業ではリソースが限られ、Excelへの手入力や照合作業だけで多大な時間が取られがちです。Terrascopeはあらゆる形式のデータをそのまま受け付けるため、企業側でのフォーマット準備や加工は不要です。また、約10万種類の排出係数から適切なものを自動マッチング。効率化されたデータ収集・検証プロセスにより、従来と比較して最大80%の測定サイクル短縮が期待できます。

2. 製品カテゴリールール(PCR)の未整備領域

ISO 14067 でも業種によっては詳細な PCR が存在しないため、企業担当者の裁量で排出係数を選ぶと結果にばらつきが生じる恐れがあります。
Terrascope には業界横断で共有可能な係数ライブラリが搭載されており、準拠ルールがない場合も最新の GHG プロトコル データベースと照合して推奨係数を提示します。

3. サプライチェーン機密情報の公開リスク

CFPを開示すると、原材料配合や物流ルートまで推測される懸念があります。
Terrascope は WBCSDのPartnership for Carbon Transparency(PACT)に正式準拠。排出量データを暗号化トークン化して交換できるため、個別レシピやコスト構造を開示せずに「総量」だけを安全に共有できます。

詳細情報:Terrascope、WBCSD PACT 準拠(PACT Conformant)へ:サプライチェーン全体でのスコープ3炭素透明性を実現

4. 算出だけでは排出削減につながらない

CFP は“健康診断”にあたるため、数値を出しただけでは排出量は減りません。
Terrascope の ホットスポット分析 & What‑if シミュレーション は、算定結果を基に「どの工程を何%改善すれば、何年で投資回収できるか」を可視化。削減ロードマップ作成から実行状況のトラッキングまで一気通貫でサポートします。

Terrascopeによるカーボンフットプリント計算の支援事例

カーボンフットプリント(CFP)算定の精度とスピードを両立させるため、国内外の企業が Terrascopeを導入しています。ここでは ポッカ/テトラパック/マツダ の最新事例を抜粋してご紹介します。

1. ポッカ - 飲料 SKU の CFP を3週間で可視化

Pokka ss

  • 課題:複雑な商品流通と多品種 SKU により、スコープ3 が排出量の約85 %を占めるもののデータ収集が困難

  • Terrascope の支援:多様なフォーマットの一次データを取り込み、約10万種の排出係数で自動マッチング。約3週間でデータ整備を完了(従来比▲80 %)

  • 成果:SKUレベルの排出量を 92 % 精度で算定し、パッケージ原料と産地が主要ホットスポットであることを特定

pokka_ja4


事例詳細ページ:ポッカ: スコープ3のデータ不足も補完できる製品カーボンフットプリント(CFP)測定

 

2. テトラパック - 16 SKU の CFP を従来法より 98 % 速く算出

tetrapak-logo

  • 課題:B2B 顧客向けに短期間で製品別 CFP を提示する必要があったが、従来の LCA 手法ではコストと期間が膨大
  • Terrascope の支援:16 SKU を対象にデータクレンジングから算定までを 1か月弱で完了(従来比 98 % 時間短縮)
  • 成果競合他社の同等製品と比べて GHG 排出量を最大88 % 低減していることを定量的に証明。テトラパックはこのデータを商談に活用し、“サステナブルな容器包装サプライヤー” としての評価向上に役立てている

    tetrapak_ja3_v2
事例詳細ページ:テトラパック:サステナブルなパッケージングに対する製品カーボンフットプリント(CFP)の算出を従来の方法より98%速く達成

【動画】テトラパックの環境戦略:カーボンフットプリントで加速するサステナビリティ


 

3. マツダ - リサイクルプラスチック袋で 57 % の CO₂ 削減効果を実証

matsuda

  • 課題:再生プラスチック袋導入による環境効果を定量的に示す必要があった

  • Terrascope の支援:従来の焼却処分シナリオと比較し、製品単位 CFP を算定

  • 成果:リサイクル袋は焼却処理に比べ CO₂ 排出量を 57 % 削減できることを明確化。調達・生産段階の改善インサイトを提示

    matsuda_roop

事例詳細ページ:マツダ:再生プラスチック袋の生産により焼却処理と比べ57%のCO₂削減を実現

Terrascope(テラスコープ)プラットフォームでできること

Terrascopeは、カーボンフットプリント(CFP)の測定から削減施策、報告・開示までをワンプラットフォームでサポートし、サステナビリティ専門家とカーボンデータ分析家によるプロフェッショナルサービスも提供しています。

  • GHG排出量の測定
    約10万種類の排出係数データを自動マッチングし、スコープ 1‑3 やCFPを高精度かつ迅速に可視化

  • 炭素削減計画の立案・推進
    排出量の多いホットスポットを特定してシナリオ分析を行い、具体的な炭素削減ロードマップを提供

  • 報告作業・気候開示
    SBTi、FLAGガイダンス、IFRS S2など国際基準に準拠した報告と開示をサポート

  • サプライチェーン連携(PACT準拠)
    WBCSDのPACTに公式対応。異なるプラットフォーム間でも製品レベル排出データをシームレスに交換し、より賢明な調達・製造の意思決定を支援。

    詳細情報:
    Terrascope、WBCSD PACT 準拠(PACT Conformant)へ:サプライチェーン全体でのスコープ3炭素透明性を実現

テラスコープのスコープ1,2,3の計測画面

Terrascope画面イメージ:排出量の把握(スコープ1,2,3)

Terrascope - CO2排出量・データギャップの解消
Terrascope画面イメージ:データギャップの解消
Terrascope - CO2排出量の測定・サプライヤーとの連携
Terrascope画面イメージ:サプライヤーとのデータ連携
Terrascope画面イメージ:削減手段の実施
Terrascope画面イメージ:削減手段の実施

機能の無料デモやご相談をお受けしていますので、下記フォームからお問合せください。

Terrascope Japanの担当者が、プラットフォーム・ツールのご紹介、サポート・コンサルについてのご説明や、まずは気軽なご相談などにご対応させて頂きます。

関連記事:脱炭素化コンサルティングとは?具体施策やTerrascopeの成功事例を解説

Terrascope-expands-to-Japan-joining-forces-with-Mitsubishi-Corporation-Tetra-Pak-Mizuho-Bank

 

無料デモ・ご相談のお問合せ

メッセージをご確認次第、担当者より迅速にご返信いたします

関連記事

【いまさら聞けない】ISO 14064・14067とは?サステナビリティ経営で“信頼を得る”ための国際規格の使い分け
気候開示

【いまさら聞けない】ISO 14064・14067とは?サステナビリティ経営で“信頼を得る”ための国際規格の使い分け

GHG排出量の可視化・開示に不可欠なISO14064・14067。製品・組織ごとのGHG排出量管理に求められる国際規格のポイントと導入メリットとは?

6月 30, 2025

管理職なら知っておきたい 2025年以降の炭素会計の未来
脱炭素経営

管理職なら知っておきたい 2025年以降の炭素会計の未来

革新的テクノロジーと世界的な気候意識の高まりが、どのように炭素会計の制度化に影響しているのでしょう。サステナブルな未来に向けた課題と機会を探りました。

6月 24, 2025

【いまさら聞けない】CBAMとは?経営判断に影響する「炭素関税」の基本と対応の全体像
気候開示

【いまさら聞けない】CBAMとは?経営判断に影響する「炭素関税」の基本と対応の全体像

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、輸出や調達に携わる日本企業にも大きな影響を与える制度です。本記事では、基本概念から対応ステップ、経営判断に必要な知識までをわかりやすく解説します。

6月 20, 2025